小さな気泡物語
心地よい季節になったので窓を開けていることが多いこの季節。
稲刈りのあとの、世にいう「田舎の香水」の臭いが鼻を突きます。
有機農法が流行りの昨今ですが、昔から稲刈りのあとはこの有機堆肥を撒いて土に栄養を与えます。この臭いを「クサイ~」とクレームをつける人もいるようですが、有機野菜にはかかせない土のためのサプリのようなもの。以前に農家の方に「クサイ臭いがなくなると肥料効果も薄れる」という話をきいたことがあります。お米や野菜が美味しくいただけるなら、数日の臭いなら我慢したいものですよね。
なにごとも生産現場では当たり前でありながら、消費者側では知りえない事実というものがあります。ガラスだってそうです。ガラスにある小さな気泡、キズや異物混入は別として気泡は紛れもない手作りガラスの証の一つです。(時としてマシン制作のものも気泡が入ってますが)粗悪品だから気泡が入るのではなく、ガラスの温度や巻き方によって入る気泡。このガラスの気泡すべてにクレームが入るとガラスの作り手はいなくなってしまうのではないでしょうか。
ちょっぴり大袈裟な言い方になってしまいましたが、夏場の暑い時なら炉から出したガラスとの温度差がまだ少ない季節、これからはその温度差が開くようになります。ガラスを作るのには適した季節到来なのですが、トラブルもでてきやすくなるのも事実です。
一生ものの名入れガラスだからこそ、良いものをお届けしたいと思っています。検品にも気を使っております。ただ、国産の職人が作ったガラスを扱う場合、気泡でクレームを入れてしまうと本当にガラスを納品しくれる国内のガラス工房さんがいなくなるかもしれないのです。
キズや異物混入・がたつきはクレームとして真摯に受け止めさせていただきますが、ちょっとしたマキムラや気泡はお許しいただけたらなと思うところはあります。
工芸品の難しいところではあるのですが、それでも名入れガラスを多くの人に届けたいと思ってお仕事をしているので、どうぞ末永く優しい目でお付き合いいただければ幸いです。(花葵の柄をあしらったワイングラスはこちら)