仕事柄、ワインパーティーなどにお呼ばれするときがあります。
特にボジョレー前後には 海外から直接ワイナリーのオーナー自らが出向き 今年のワインについて、その出来具合を説明してくれます。ワインは「どの土地のものを買うか」も大切ですが「どんな人が作ったワインを買うか」というのも重要なことになるからです。フランスのワインのラベルには 必ずAOC「Appellation Contrôlée」アペラシオン・コントロレといって日本名で原産地呼称統制、そのワインがつくられた特定の地域や区域の名称が記載されています。
たとえば、ブルゴーニュやボルドーといった呼称。ワインが高級になるほどその地域や区域が狭くなり格付けが高いとされています。ブルゴーニュやボルドーといった地域名よりもメドック、コート・ドゥ・ニュイといった地区名が格上で マルゴー、ボーヌ・ロマネといった村名がさらに格上で ボルドーワインでは村名が最高位ですが ブルゴーニュワインでは畑名まで細分化された格付けとなります。これは生産地域が狭いほど、より限定された産地(アペラシオン)の個性を反映されたワインとなり高級とされるからです。有名なので ロマネ・コンティとうワインがありますが、価格は数十万円とも数百万円とも。その価格の違いは収穫されたぶどうの品質により値段が左右されます。生産量は平均で年6000本。それを全世界の人が買いたいと思うのですから需要と供給のバランスで高値となるわけですね。それならば8000本作ればいいと思うのが浅はかな知恵で(笑)畑の広さが1.81ヘクタールしかないから生産できない、なので「飲まれるより、語られることの多いワイン」とされているわけです。
さて、フランスでワインの格付けが行われるようになったのは 1930年代の初め。ヨーロッパで3年連続の悪天候と経済不況で フランスのワイン業界も打撃を受けました。そこにフランスの有名産地を偽るワインが大量に出回るという不幸があったのです。その対抗手段として法律の制定が始まりました。それが最初に述べたワイン法=原産地統制名称(AOC)の始まりです。この法律のおかげで外部に対して偽物の製造を防ぐことができ、また内部に対しては それぞれの品質や個性を守るという効果が生まれました。
ただ、ここでご注意いただきたいのは全フランスのワイン全てがAOC指定のものでないということです。大きく分けてテーブルワインから始まり4種類に分かれます。(ただし、これはフランスのワインにおいてです。ドイツやイタリアなど国ごとに変わってきます。)私などは普段1000円台のワインしか飲みませんし、実際にワインの消費を支えているのは1本1000円以下のテーブルワインが主流です。2012年度は日本国内においてワインの消費は過去最高となる約32万リットルと発表されました。
ワイン愛好家たちの願いは、多くのワインを楽しく飲んでいただくこと。そこにワインの格付けなどロマネ・コンティのような話のネタなどを交えながら、楽しい時を過ごせること。私は、これほど価格の開きの大きい食品は少ないと思います。そこにはワインの味以外にも 作り手や畑の歴史のストーリーがあるからです。ロマネ・・コンティも最初はルイ14世の薬をつくる畑として作られ、それがフランス革命後に国に没収された畑です。そんな背景を知るとフランスの歴史にさえ興味がもてます。
キリストが最後の晩餐にも食したワイン。そして最も古い歴史のあるお酒とされるがゆえ、全世界の人々から愛されるワイン。ワインは楽しく美味しく飲むもの。いいワイングラスは もっとワインが飲みたくなるグラス。今日も一日の終わりに美味しくワインがいただけるよう、がんばって仕事しましょう。
写真は 国際ソムリエ協会会長 田崎真也さんとご一緒に。