「私の趣味はガラスで器を作ることです!」と、言い切れる人が一番多い都道府県はもしかすると徳島なのかもしれない。周りにそんな人達が多すぎて今まで考えてもみなかったのだけど。
パッチワークが趣味なら布と針があれば場所を選ばない。スポーツが趣味なら場所を選んだとしても道具さえ揃えば簡単にできる。でも、1300度の溶解炉を365日24時間管理してガラスを吹いてコップやお皿を作ることを趣味でできる場所はそんなに多くないだろう。
ガラスを学べる大学は15大学あり、専門学校を含めれば それなりの数はある。個人工房を運営される方も沖縄や北海道・東京など民芸品としてのガラスが有名な土地柄ならそれなりにあるだろう。それでも私の周りには民芸品ではなく、25年以上ガラス細工を作り続けている人たちがたくさんいる。実はそのスタジオは実家から車で10分足らずの場所にあったので そんなスタジオや作り手たちは全国にたくさんいるものだと思ってた。
ガラスの成型方法の一つに パート・ド・ヴェールという方法がある。紀元前16世紀 メソポタミア文明で発明された方法で 紀元前1世紀前に吹きガラスが発明されるまでよく使われた方法だったが、ガラスを取り出すために鋳型を壊さなくてはならず量産できない手法のために現在も
個人作家での制作がそのほとんどだろう。制作自体も根気のいる仕事ですでにあるガラスをカットしてそれを頭の中で書いた設計図に沿って作り上げて行く。今回拝見させていただいた作り手も ガラスと取り組んで25年以上のベテランさん。手際よくガラスを刻む姿は完全に趣味の領域を越えている。
私にはこのパート・ド・ヴェールがどのように仕上がるのか 上手に想像することができない。なぜなら焼いた後に研磨や細工をどのように施すかは作り手だけが知っているから。事もなげをガラスを扱う姿は ちょっと壊れたガラスをおっかなびっくり掃除する人から見ればゴットハンドにさえ見えるかもしれない。カッコいいし、私はその姿に心からリスペクトしてしまう。
ガラスに細工を施す方法は 色々ある。当店が専門でやっているサンドブラストだって毎日20個~30個と作って それでもまだまだだなあと思う。だからいろんな技法を取り入れることはサンドブラストの職人を目指す私たちとはまた少し違う。それでもなにかしら同じガラスとしてコラボレーションすることはおもしろいのではないかと思っている。
なによりこの切り刻まれたガラスで何ができてどうなるのか 最後まで見届けたいし 多くの人にも知って欲しいとガラスを愛する人間としては思うのである。